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出雲盛衰記51
 出雲盛衰記
 五十一章



 突如部屋の中央に現れた金髪の美女。
 その場にいたものの視線は例外なくその美女に注がれている。
 奇異なる現象にそれでも取り乱さなかったのは、ある意味さすがと言える。
 それでも混乱は必然として、特に星華は目に見えて狼狽していた。

「ちょっと亜衣。な、何今の?」
「さ、さぁ? 私にもさっぱり……」
 幾分警戒しながら様子をうかがっていると、金髪の美女は蹲ったまま顔を上げ、視線を九峪へと向けた。

「痛いです」
 ぽつりと呟く。
 目には涙を浮かべ、瘤の出来た頭をおっかなびっくりさすっている。

「そうか、そりゃ良かったな」
 九峪は平然と言い放ち、一切同情の籠もらない目で女を見つめていた。

「あの、九峪君。もう少し呼び出し方に優しさがあってもいいと思うんだけど?」
「そうか? 人を上空五百メートルから容赦なくたたき落とした奴の台詞とは俺にはとても思えないんだが、一応正気の確認をとってもいいか?」
「あうぅ、だって他に見つからないで入る方法が……」
「……」
 じと目で睨まれてしゅんとなる女。

「え~と、九峪様。誰ですかその人?」
 柚子妃が困ったように口を挟む。
「え、ああ、ほら自己紹介くらい自分でやれよ。いい歳なんだから」
「誰のせいで間をはずしたと……」
 ぶつぶつと文句を言いながら女は勢いよく立ち上がりその場にいた面々を見渡した。

「我こそは初代耶麻台国女王にして、天照大御神の末、姫御子である」
 それまでの態度から一変させてそう宣言した。

 戸惑う人々。
「「…………」」
 誰もがどう反応していいのか分からず再び固まる。

「あ、あのぉ~、ほ、本当なんですよ?」
 引きつった笑みを浮かべながら弱気に言う。
「……姫御子、様?」
 はじめに呟いたのは衣緒。

「そう! 私こそが耶麻台国を造ったその人。魔天戦争で荒廃しきった九洲の人々をまとめ上げ、生きていけるための基盤を造ってあげたエライ人よ」
 そう言ってえっへんと胸を張る。

「嘘くさ」

 呟いたのは星華。確かに姫御子の登場シーンはあまりに威厳が無さ過ぎた。それに加えてどうにも弱腰。国を治める事が出来たとは思えない。

「あぅ。く、九峪君があんな呼び出し方するから、みんな疑心暗鬼になってるじゃない」
「疑心? 疑う余地なく偽者だと断定していないか?」
 うんうんと頷く星華と柚子妃。

「ひ、酷い! 確かに私ってとっても気さくで親しみやすいけど、ちゃんと天空人だし本当に火魅子なんだから」
「……そう仰るなら何か証拠は?」
 冷静な亜衣の一言。姫御子はそうだと頷いて豊満な胸元に手を突っ込むと、中から何やら取り出す。

「じゃっじゃじゃ~ん!」
 意気揚々と取り出したものを掲げる姫御子。それは見た目黒曜石か何かで出来た、なめらかな黒い球体だった。
「なんだよそれ?」
 聞いたのは九峪。姫御子はふふんと得意気な面持ちで、それに自らの気を送り込んだ。

 いいぃぃぃぃぃぃいいいん

 耳に痛い不協和音を響かせながら、黒い球体は流動するように形を変え、膨張し、発光と共に姫御子の手の中で一振りの剣となっていた。

 それは、とても歪な剣だった。
 刀身は枝のように七つに分かれ、黒光りした全体色は一見して刃物とは見えない。
 
 ただ、刀身にそって赤く浮かび上がった難解な文字と、剣全体から発せられる神気が、それが人の身では作り出し得ない、神器であることを主張していた。

「――馬鹿な」
 呟きは亜衣のもの。
 彼女は宗像神社の巫女。当然耶麻台国の神器にも詳しい。
 自称姫御子の手に握られている剣は、紛れもない耶麻台国の神器、七支刀であった。

「そんなはずは。それは十二代前に内乱があった折、姫御子の御霊が身内に使われることを畏れて封印した幻の神器」
 衣緒も、星華もその事実は知っている。
 知っているからこそ、驚愕している。その七支刀――どうみても本物――を今現在有している人間がいるとすれば、それは当の姫御子を置いて他にいない。

 ――本物。
 その事実が脳に認識されると同時に、一様に三人は息を飲んだ。

 今の復興軍を見て、姫御子がどう思うか。そんなことは考えるまでもない。そして、わざわざ本人が出てきたとすれば、その目的も一つしかあり得ない。

 ――やれやれ、これが結末か。
 亜衣は割と冷静にその事実を受け入れていた。
 亜衣自身、これまでの自分の行動が間違っているとは思ってはいない。どうあれ自分は耶麻台国の為に裏切りも汚い真似も行ってきたが、その贖罪は復興がなされたときに自ら行うと決めていた。だが、真に自分を裁けるものが現れた。

 ――結局、私は間違っていたと言うことか。
 そう考えて首を振る。

 ――いや、間違ってはいない。私は、こうなることすら望んでいたのだから。
 少なくとも、思い描いてきた結末の一つ。それもかなり上等な部類だと思うと、亜衣は心が安らぐのを感じだ。

 ――これで、楽になれるか。

 この後の歴史に、どのような汚名が載せられるかは分からなかったが、それでも後悔は無い。だから、亜衣はまっすぐと姫御子を見つめた。

「私を処断しに来られたのですか?」
 静かな言葉に、星華と衣緒がびくりと反応する。
「姫御子様直々に手を煩わせるとは、私もよくよく罪な事をしていたと見える」
 冷笑さえ浮かべた亜衣に、姫御子は戸惑った視線を返した。

「なぜ貴方を殺さなければならないの?」
「……? では姫御子様は何をしに?」
 亜衣は当惑する。他に心当たりが無い。では、星華の方を?

 姫御子は九峪の横にちょこんと――身体が大きいくせにその形容がはまるほどなぜか愛らしく――腰を下ろす。
「話を戻しましょう。姫御子である事はご理解頂けたようですから、本題に移らせて頂きます」
 幾分締まった顔で言うと、緊張でその場にいた九峪以外の背筋が伸びた。
「え~と……………………、なんだっけ?」
 長い沈黙の後半笑いで九峪に聞いてくる姫御子。

 一斉にこける。

「……前々から思ってたんだけどよ。お前ボケてるんじゃないのか?」
「し、失礼ね! ただちょっと唐突な状況で混乱しているだけよ」
「どうだかなぁ。まぁ、なんだっけ? ああ、そうだ天魔鏡を壊されると困るから、さっさと再興軍に降伏してくれって話だな」
「あ、そうそう。それに本物の火魅子候補が死んだりしたら目も当てられないもの」

「ほ、本物の火魅子候補?」
 その言葉に食いついてきたのは当然星華だ。
「そ、本物。あ、ちなみに貴方は見るからに違うわね。この場にいる四人ではないか。まぁ、早々都合良く見つかりはしないわよね」

「――!」
 絶句する星華。絶望的な表情になると同時に、俯いてしまう。
「え、え? でも、星華様だけは本物だってキョウ様も……」
 衣緒が追いすがるが、姫御子は容赦なく斬って捨てる。

「天魔鏡は自己保全を最優先させるように出来てますから、その為ならどんな嘘も平気で吐きますよ。そう、ただの一般人を火魅子だと言わせるくらい簡単に」
「そ、そんな……」
 トドメを挿されてますます落ち込む星華。

「ちなみにそちらの子も火魅子候補ではありませんね。と言うか……」
 目を細める姫御子。柚子妃は慌てふためいて九峪に目配せする。
 九峪は軽く頷くと、何事か口走りそうになった姫御子の口を塞ぐ。
 塞ぐと言うよりは顔面に裏拳を入れた。
「ふげっ!」
「柚子妃はそもそも九洲の生まれじゃないしな」

 鼻を抑えながらもだえている姫御子を平然と無視して、今度は九峪が話を進める。
「まぁ、細かい話は面倒だから無しだ。ともかく戦争がこのまましたいと言うならそれでもいい。天魔鏡をよこしてくれればな。まぁ、結果的に求心力の中心を引き抜くことになるわけだし、戦争など出来ないだろうし、もしやっても負けるだけだろうから、慈悲を籠めて降伏しろと言いたいわけだが。異論はあるか、亜衣」
「……ええ」
 亜衣は予想外の返事を返した。

「姉様? なぜです? これ以上の争いは無意味です!」
「なぜだ? 姫御子様が再興軍に与しているというなら、確かに復興軍としてこれ以上の抗戦に意味はない。だが、聞けば戦そのものを止めに来たというわけでもないようだ。であれば、我らの戦争はここで止めてはいけないだろう。それともやはり止めますか? 姫御子様」
 姫御子は首を振る。

「そもそも私が干渉する事じゃないし。ただ、火魅子候補はほぼ確実に復興軍か再興軍にいるから、その選定が終わった後ならばと言う条件付きですけど」
「どのくらいで終わりますか?」
「天魔鏡を持ってきてくれるなら、直ぐにでも終わるわよ。終わったらもう用済みだから、割ろうが飾ろうが悪用しようが文句はありません。でもいいの? 今止めなければ、あなた死にますよ」
「迷惑な話でしょうが、死ぬのも必要な事ではありませんか?」
「え?」
 亜衣の言葉に、衣緒も星華も息をのんだ。

「ね、姉様。それじゃ始めから……」
「勘違いするな。負けるつもりだったワケじゃない。ただ、姫御子様が現れて、いざ自分がやって来た事が誤りだったのかと思ったら、なんだか馬鹿馬鹿しくなってしまってな。どのみち再興軍で事が成せぬワケでも無いだろうし、かといって自体を収拾させるのに今更すんなり引き下がるのもあまりいい話ではない。付き合って貰う兵達には悪いがな」

「……ご立派な覚悟です」
 姫御子は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「いえ」
 亜衣は軽く一礼すると席を立つ。
「では、天魔鏡をお持ちします。事が終わったらお二人は早々に街から出られるように。おそらくは今日中に決着は付きます」
「あ、姉様」
 慌てて亜衣に付いていく衣緒。

 部屋に残された九峪、姫御子、星華、柚子妃。
 重苦しい沈黙を、破ったのは柚子妃。

「九峪……。本当にいいの?」

 それはこの中で唯一、九峪の本質を理解しているが故の言葉だった。

「まぁ、もう一波乱……ありそうだなぁ」

 けだるそうなため息と共に、九峪は重い腰を上げた。













追記:
 五十一章終了。あぁ~、疲れた。なんか滅茶苦茶な話になったなぁ。亜衣が改心して姫御子はどんどんアホになっていって、五十章が改訂版になって……。あ、まだ読んでない人は音羽が柚子妃になっててあれっと思ったかも知れませんね。直しましたから、その点注意。来月に入ったら間違いの元は消しときますね。
 さて、次回どうなるか。すんなり話が終わるのか。それともまだなんかあるのか? 亜衣が殊勝な考えなんて本気か作者! って事で次回にご期待。あまり期待すると肩すかしなのは毎度のことだけど。

 では、web拍手の紹介の方を。
 17日分、二件まとめて。

0:36 50話到達おめでとうございます。これからも楽しみませていただきます。
0:38 紅玉が墜ちた・・・。っていうか音羽かよ。姫神子の存在すっかり忘れてたなぁ。
 といただきました。
 あ、ありがとうございます。なんとか五十章。っていうかこの辺で終わらせる予定だったのに、なんか六十くらいまで伸びそうな……。むしろ超え……。まぁ、何とか終わらせたいと思います。
 音羽に関しては済みません。この後の狗根国との絡みの関係で、柚子妃を挟む予定だったのを失念していて適当に音羽を放り込んでしまいました。紅玉は落とし方がイマイチでしたので、不満が一杯ですがなんか最近ネタにつまり気味で(イイワケスンナ 姫御子は忘れてもいいです(爆 嘘です。
 コメントありがとうございました。

 時間帯的に上と同じ人かも知れない次二件。

0:42 姫御子登場ですがしまらないなぁ。もう彼女は完全にギャグ畑の住人ですね。後は九峪に食われるだけの
0:42 存在って事でしょうか。彼との間に子供が出来たら、天目の子以上のバケモノなんだろうなぁ……むしろ神?
 といただきました。
 仕方ないんです。姫御子チャンは頭の配線がちょっとマズイ子なんです。なま暖かい目で見守って下さい(笑
 九峪に喰われるかどうかは……、まぁ喰われるんでしょうね。二人の間に子供が……、出来るのか? 九峪は暗黒面にどっぷりなので属性が打ち消しあって案外普通の子供が生まれるかも知れません。まぁ、化け物である可能性も大ですが。でも、子供は出来ないだろうなぁ。
 コメントありがとうございました。

 続いての二件。

13:20 シロクマ倒せる小学生>このネタだけわからなかったんですけど教えてもらえません?
13:34 DL版はなんで必ず始めてのキャラの名前が抜けてるんですか?
 といただきました。
 え~と、盛衰記の二章の話だと思いますが、
『おいおい。俺は数万人も殺戮するようなテロリストでも、無敵補正がかかったクズでも、シロクマ倒せる小学生でも無い、人畜無害なタダのおっさんだぞ』
 って奴ですね、多分。テロリストは幻聴記の九峪。無敵補正がかかったクズは徒然草の九峪。そしてシロクマ倒せる小学生は、新説の九峪です。まぁ、本編で倒したワケでもありませんが、元ネタはそこです。しかし人畜無害って女性に関してはどの九峪よりも有害なんですけど(笑
 DL版の名前が抜けてる? と言うご指摘はえ~と、徒然の話だと思うんですが、抜けてたかな~。後で確認してみます。ただ、もしかしたら初物キャラを名前を出さないまま引っ張る作者の書き方に関する指摘かも分かりませんね。盛衰記でも紅玉回想編とかは紅玉が女としかなってなかったりする。名前出した方が書きやすくはあるんですけど、タイミングを逸するとそのままずるずるとなったりしてます。特にこだわりがある部分でも無いので、その点は直そうかなぁと思っていたりもするんですが。
 コメントありがとうございました。

 次。

16:57 ナイス更新速度!
 といただきました。
 週二くらいで更新してますなぁ。まぁ、暇が三時間あれば確実に書けるんですが、今回とか一時間半くらいで書いてるし……。と言うことで神様作者の一日を二十七時間にして下さい。多分睡眠時間にあてますけど。
 コメントありがとうございました。

 最後。

21:31 紅玉さん食べたんですね、この調子でもう2,30人、、、
 といただきました。
 に、二、三十って。そんなに喰ってたら百章突破しちまいます。勘弁して下さい。まぁ、一行で『九峪は美女二十人を一晩で平らげた。九峪は腎虚になった』とか書いてもいいんですが(笑 というか、キャラがいない。まぁ、二、三人は喰ってもいいのかなとは思いますが……。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆さんありがとうございます。

 さて、続いて直接のコメント。アレクサエルさんから。

いつもながら、最高におもしろい。
紅玉親子も「ほぼ」完全に味方にし、衣緒も好意的に・・・・・。
しかし、音羽を火魅子候補にするとは、しかし、音羽の離反を防ぐ、亜衣の苦肉の策かな。 ある意味、楽な方法かも知れません。 火魅子の価値は売り手市場で、下がりますが・・・・・。
亜衣に「神の遣い」がいても、姫御子が九峪側では、逆転不可かな?
亜衣や星華が九峪を篭絡しようとするか・・・・・ それとも、逆に九峪に喰われてしまうか・・・・・・・。 楽しみです。
しかし、亜衣や星華を、再興軍の幹部は事情を知っているから、許しますかね?
 といただきました。
 最高におもしろいとは、また過分なお褒めの言葉ありがとうございます。言われて悪い気はしないお調子者の作者です。
 音羽に関しては平にご容赦を。間違いでしたって、何やってるんだ本当に。離反も何も多分音羽は今頃天目の下でこき使われてるでしょう。話にも噛めないほどに忙しく立ち回っているはずです。火魅子の価値が下がるって、まぁ盛衰記に関しては火魅子の価値なんてあってなきがごとしですが。
 そして神の遣い……。あ、忘れてた(ぇ あれ~、どうしよう。なんてことは多分無くて、だからといって活躍も何もないのが盛衰記の神の遣い。一体誰なんだと言うことは、もう少しお預けで。
 星華と亜衣に関してももう少し話があるはずで、誰を九峪が喰うかは神のみぞ知る(神の遣いは知りません)。
 今回の話の流れのままなら、亜衣と星華は討ち死にしてくれないと困りますが、さて、どうなるか(むっふっふ
 楽しみを半減させないように頑張りたいと思います。


 と、言うことで本日はこの辺で。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/06/19 18:04】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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